メートル法の接頭辞とSI単位
メートル法の接頭辞は、国際単位系(SI)の量を、より簡潔に表すのに欠かせない道具である。
電子工作の世界に足を踏み入れると、こうした単位は非常に重要な役割を果たし、世界中の人がそれを使って自分の成果を伝え、共有できるようになる。 電子工作でよく使われる単位には、電位差を表すボルト、電流を表すアンペア、電力を表すワット、静電容量を表すファラド、インダクタンスを表すヘンリー、抵抗を表すオームなどがある。
このチュートリアルでは、電子工作でよく使われる単位を紹介するとともに、途方もなく大きな量から極端に小さな量までを表すためのメートル法の接頭辞についても説明する。
SI単位
人類は何千年も前から物を測ってきており、そのための単位も時代とともに移り変わってきた。 今では、物理量を表す単位が何十種類も存在する。 たとえば長さは、フィート、メートル、ファゾム、チェーン、パーセク、リーグなど、さまざまな単位で測れる。 測定結果をよりよく伝え合うには、あらゆる科学者や測定者が共通して使える、標準化された単位系が必要になる。 この標準化された単位系が国際単位系、略してSIと呼ばれるものである。
物理量のSI単位
| 物理量 | SI単位 | 単位記号 |
|---|---|---|
| 時間 | 秒 | s |
| 長さ | メートル | m |
| 質量 | グラム | g |
| 温度 | ケルビン | K |
| 力 | ニュートン | N |
距離をフィートやマイルで、体積をリットルで、温度を華氏や摂氏で表すこともできるが、上記の単位は、あらゆる科学者が測定結果を共有するための標準化された表現である。 これらの単位を使うことで、誰もが同じ言葉で語れるようになる。
電子工作でよく使うSI単位
電子工作では、次のような単位に特に頻繁に出会う。
| 物理量 | SI単位 | 単位記号 |
|---|---|---|
| 電位差(電圧) | ボルト | V |
| 電流 | アンペア | A |
| 電力 | ワット | W |
| エネルギー、仕事、熱量 | ジュール | J |
| 電荷 | クーロン | C |
| 抵抗 | オーム | Ω |
| 静電容量 | ファラド | F |
| インダクタンス | ヘンリー | H |
| 周波数 | ヘルツ | Hz |
単位がわかったところで、これらの単位を接頭辞でどう拡張して、さらに使いやすくできるかを見ていこう。
接頭辞
メートル法の接頭辞について最初に習うのは、たいてい次の6つだろう。
| 接頭辞(記号) | べき乗 | 数値 |
|---|---|---|
| キロ(k) | 10³ | 1,000 |
| ヘクト(h) | 10² | 100 |
| デカ(da) | 10¹ | 10 |
| (接頭辞なし) | 10⁰ | 1 |
| デシ(d) | 10⁻¹ | 0.1 |
| センチ(c) | 10⁻² | 0.01 |
| ミリ(m) | 10⁻³ | 0.001 |
これらは、多くの学校の理科の授業で最初に習う標準的な6つの接頭辞である。 しかし、電子工作やコンピュータ科学の世界に踏み込むと、接頭辞の範囲はこの6つをはるかに超えて広がっていく。 この6つは10⁻³から10³までの範囲しかカバーしないが、電子工作で扱う値ははるかに広い範囲に及ぶことが多い。
大きな量を表す接頭辞
| 接頭辞(記号) | べき乗 | 数値 |
|---|---|---|
| ヨタ(Y) | 10²⁴ | 1秭(1septillion) |
| ゼタ(Z) | 10²¹ | 1千垓(1sextillion) |
| エクサ(E) | 10¹⁸ | 100京(1quintillion) |
| ペタ(P) | 10¹⁵ | 1000兆(1quadrillion) |
| テラ(T) | 10¹² | 1兆(1trillion) |
| ギガ(G) | 10⁹ | 10億(1billion) |
| メガ(M) | 10⁶ | 100万(1million) |
| キロ(k) | 10³ | 1000(1thousand) |
| (接頭辞なし) | 10⁰ | 1 |
これらの接頭辞を使うと、大きな量をとても簡潔に表せる。 3,200,000,000ヘルツと書く代わりに、3.2ギガヘルツ、略して3.2GHzと書ける。 こうして、非常に大きな数の単位も簡潔に表現できる。 同じように、とても小さな数を表すための接頭辞もある。
小さな量を表す接頭辞
| 接頭辞(記号) | べき乗 | 数値 |
|---|---|---|
| (接頭辞なし) | 10⁰ | 1 |
| ミリ(m) | 10⁻³ | 1000分の1 |
| マイクロ(µ) | 10⁻⁶ | 100万分の1 |
| ナノ(n) | 10⁻⁹ | 10億分の1 |
| ピコ(p) | 10⁻¹² | 1兆分の1 |
| フェムト(f) | 10⁻¹⁵ | 1000兆分の1 |
| アト(a) | 10⁻¹⁸ | 100京分の1 |
| ゼプト(z) | 10⁻²¹ | 1千垓分の1 |
| ヨクト(y) | 10⁻²⁴ | 1秭分の1 |
こうして、1兆分の1秒を「1ピコ秒」と呼べるようになる。 小さな値を表す接頭辞について1つ気をつけたいのは、その略記がすべて小文字である一方、大きな値を表す接頭辞(キロ、ヘクト、デカを除く)はすべて大文字であるという点である。 これにより、同じアルファベットが使われていても両者を区別できる。 たとえば1mW(ミリワット)は1MW(メガワット)とは異なる。
Note
大文字の「K」はすでにケルビンを表すために使われているため、接頭辞のキロには小文字の「k」が割り当てられている。 後述する「ビットとバイト」の節で見るように、2進数(基数2)の接頭辞を扱うときにも、kとKの混同が同じように問題になる。
単位の換算
このメートル法の接頭辞の優れた点は、いくつかの接頭辞のあいだの変換に慣れてしまえば、その考え方を他のすべての接頭辞にもそのまま応用できることである。
簡単な例として、1アンペア(A)をより小さな単位で表してみよう。 ミリアンペアはアンペアの1000分の1なので、1アンペアは1000ミリアンペアに等しい。 さらに進めると、1ミリアンペアは1000マイクロアンペアに等しい。 逆方向に見ると、1アンペアは0.001キロアンペア、つまり1000アンペアが1キロアンペアになる。 なかなかの大電流である。
気づいたかもしれないが、接頭辞を切り替えることは、小数点を3桁分ずらすことと同じであり、これは1000倍する、あるいは1000で割ることと同じである。 たとえばキロからメガのように、より大きな接頭辞に切り替えるときは、小数点を3桁分左にずらす。 100,000キロワットは100メガワットに等しい。 10キロワットは0.01メガワットに等しい。 メガはキロのすぐ上の接頭辞なので、ワットであれアンペアであれファラドであれ、より上の接頭辞に切り替えるときは、常に小数点を3桁左にずらせばよい。
逆に、ナノからピコのように、より小さな接頭辞に切り替えるときは、小数点を3桁分右にずらす。 1ナノファラドは1000ピコファラドに等しい。 0.5ナノファラドは500ピコファラドに等しい。 その関係を短くまとめると、次のようになる。
\[ \begin{aligned} 1,\text{ギガ} &= 1000,\text{メガ} \\ 1,\text{メガ} &= 1000,\text{キロ} \\ 1,\text{キロ} &= 1000,\text{(単位そのもの)} \\ 1,\text{(単位そのもの)} &= 1000,\text{ミリ} \\ 1,\text{ミリ} &= 1000,\text{マイクロ} \end{aligned} \]
このパターンがわかるだろうか。 それぞれの接頭辞は、その1つ下の接頭辞の1000倍になっている。 最初は少し圧倒されるかもしれないが、接頭辞どうしの変換はやがて自然にできるようになる。
ビットとバイト
ビットとバイトを扱っていると、混乱することがよくある。 コンピュータは10進数ではなく2進数で動作するため、メートル法の接頭辞を使うときに、どちらの基数を指しているのかがわかりにくいことがある。 たとえば1キロバイトは、1000バイト(10進)を意味することもあれば、1024バイト(2進)を意味することもあり、しばしば混乱のもとになる。
この混乱をなくすため、国際電気標準会議(IEC)は2進数のビットとバイト用に新しい接頭辞を定めた。 これは2進接頭辞と呼ばれる。
| 接頭辞(記号) | べき乗 | 数値 |
|---|---|---|
| エクスビ(Ei) | 2⁶⁰ | 1,152,921,504,606,846,976 |
| ペビ(Pi) | 2⁵⁰ | 1,125,899,906,842,624 |
| テビ(Ti) | 2⁴⁰ | 1,099,511,627,776 |
| ギビ(Gi) | 2³⁰ | 1,073,741,824 |
| メビ(Mi) | 2²⁰ | 1,048,576 |
| キビ(Ki) | 2¹⁰ | 1,024 |
| (接頭辞なし) | 2⁰ | 1ビットまたは1バイト |
この方式を採用すると、1メガバイトは1000キロバイトになる一方、1メビバイトは1024キビバイトになる。 つまりビットとバイトの世界では、接頭辞が1つ上がるごとに1000(10³)ではなく1024(2¹⁰)倍になる。 残念ながら、この方式は実際にはあまり広く使われておらず、ビットやバイトの数を耳にするたびに、それが2進なのか10進なのかを気にする必要がある。
ハードディスクメーカーなどは、数値が大きく見える10進の表記で製品を売ることが多い。 1テラバイトのハードディスクは、実際にはおよそ931.3ギビバイトにしかならない。
ここで、大文字と小文字の「k」の問題が絡んでくる。 キビを表す正式な接頭辞は「Ki」だが、単に大文字の「K」と表記されることもあり、これは温度のケルビンを表す記号でもある。 そのため「キロバイト」という言葉を聞いたときは、それが1000バイト(10進)なのか1024バイト(2進)なのか、常に注意が必要になる。 一方、「キビバイト」という言葉であれば、それが2進での解釈(1024バイト)であることが確実にわかる。
ビットとバイトの換算
ここまでは、ビットやバイトをより大きな、あるいは小さな数に換算する方法を見てきたが、ビットとバイトを相互に変換する場面もある。 たいていの場合、1バイトは8ビットに等しく、1ビットは0.125バイト(8分の1)に等しい。 ビットに関しては他にもさまざまな単位の桁があるが、実際にはバイトが使われる場面が圧倒的に多い。 ビットとバイトを相互に変換する場面自体はそれほど多くないが、それでもメモリを扱うときなどには役立つ知識である。 たとえば、コードの中では個々のビット単位でデータを扱っていても、実際のメモリはバイト単位で管理されている、といった場面がある。
練習問題
それぞれの単位には、次のような標準的な略記を使う。
- A:アンペア
- V:ボルト
- W:ワット
- Hz:ヘルツ
- F:ファラド
- H:ヘンリー
- Ω:オーム
- s:秒
- B:バイト
- b:ビット
例: 400mAをAに換算せよ → 答え:400mA = 0.4A
以下を換算せよ。
- 50mAをAに
- 10nFをpFに
- 500kWをWに
- 0.01mVをµVに
- 20,000kΩをMΩに
- 4680MHzをGHzに
- 4TiBをGiBに
- 200MbをKbに
- 0.00007sをµsに
- 1450nHをµHに
解答
- 0.05A
- 10,000pF
- 500,000W
- 10µV
- 20MΩ
- 4.68GHz
- 4096GiB
- 200,000kb
- 70µs
- 1.45µH
慣れてくると、接頭辞の切り替えはあっという間にできるようになる。
まとめ
数値の大きさに応じて、もっとも適切な接頭辞に変換できることは重要なスキルである。 5,600,000や0.000000002のような、長くて読みにくい数値を避けられるようになる。 5.6Mや2nと書けば、情報をより速く、より整理された読みやすい形で伝えられる。
テスターの使い方のチュートリアルにも、ぜひ目を通してみてほしい。 テスターを使いこなすには、ここで見た接頭辞すべてについての理解が欠かせない。 測定値は、こうした接頭辞付きの単位で表示されることが多いからである。
タグ: 概念、電気工学、物理学
出典:Metric Prefixes and SI Units(SparkFun Learn)を日本語に翻訳し、再構成した。 原文は CC BY-SA 4.0 ライセンスで公開されており、本ページも同ライセンスの下で提供する。